紛うことなき夏の1日。たぶん東京で暮らす人はみんな今日,今年の夏の幕開けを感じたのではないだろうか。もう冷房なしでは寝苦しい。寝汗で起きる。日焼け止めを塗る。日傘もさす。ちょっと歩くと汗が止まらない。そういう時期だ。

妻がもんじゃ焼きを食べたいというので,食べに行くことにした。もんじゃといえば月島・浅草というのが定石だろう。ということで,その周辺のお店に片っ端から電話で予約を試みるのだが,これが笑えるくらいに軒並み満席。夫婦揃って10件くらいは電話を入れたんじゃなかろうか。7件目あたりからは僕も妻も半分捨て鉢で,通話しながら次の店を探し始める始末だった。

このまま延々と月島くんだりにこだわっていたら埒があかないということで,ものの試しに丸の内のビル内にあるもんじゃ屋に電話してみると,これがあっさり予約が取れて拍子抜けしてしまった。土曜に丸の内までもんじゃ焼きを食べに行くのを物好きとまでは言わないが,月島もんじゃの観光需要とのバランスを考えれば少数派なのは間違いなかろう。ところが実際に店舗まで行ってみるとまだ夕飯には早い時刻だというのに,すでに4,5組,しっかり行列が出来ている。驚いた。どうやら僕の想像の何倍も,もんじゃ焼きは流行っているらしい。

カウンター席に案内されて,明太子もんじゃと豚キムチもんじゃを注文した。目の前の鉄板でスタッフが1から焼いて提供するスタイルのようだ。その奥が厨房になっていて,せわしない働きっぷりが僕たちの席からは常によく見える。これがいけなかった。テキパキとせわしない分には見ていて気持ちがいいものだが,全体的にダラダラとしているのにどこかせわしない。要するに落ち着きがない。オペレーションが良くないし,店舗構造もちぐはくで,私語が多く,監督者不在のままパートタイマーだけで回しているように見受けられた。数十分程度の滞在にも関わらず,衛生的に際どい場面もそれなりにあった。

せっかく丸の内に来たので丸善に寄った。都内でも大型書店が減ってしまって寂しい。かくいう僕もほとんど電子書籍しか買わないし,買うにしてもAmazon経由がほとんどだ。しかし久しぶりに来て,改めて大型の新刊書店というのは独特の存在意義を残していると思う。あれだけの物質的な情報に囲まれてその中をうろうろしていると,良くも悪くも時間が溶ける。つまり楽しいということだ。自分の興味がいまどこにあるかを知るきっかけにもなる。少し前であればプログラミングの棚の前に何時間でも居ただろうが,今日は色々な雑誌を立ち読みしていたらあっという間に1時間経っていた。そこで見つけた「東京人」という雑誌が小粋でじつによかった。定期購読してもいいかもしれない。そういえば数学セミナーとNewtonは,いつも定期購読しようと思って忘れている。こうやって定期的に,忘れていたことを思い出す。もう何年も繰り返している。

丸の内から四谷までは電車に乗った。四谷から自宅までは2人で寄り道を繰り返しながら散歩をした。1時間くらい歩いて,国立競技場のある明治公園を横切り,ダイエット中の逡巡を無視してラーメン屋に入った。僕はチャーシュー麺。妻はラーメン。黄色い看板が目標のラーメン屋だが,偉いのはこの立地にして24時間営業である。夜中にどうしてもラーメンが食べたくて狂おしくなった我々が,この店に何度救われたことか知れない。今日も美味しかった。ごちそうさま。