遅く起きた。口が渇いている。前日のアルコールが少し残っているからだろう。定期的に会う友人が昨日も遊びに来た。そこで話が興に乗ってそれなりに酒を飲んだ。飲み過ぎたというほどではないが,節制したかというと決してそんなこともない。なんにせよ身体全体がほんのりと気怠い。料理を作る気にもならないし,外に出かける気力もない。仕方ないので,景気付けにハンバーガーを注文する。酔い覚めのブランチだ。

ブランチという音から真っ先に git の branch 概念を連想するのは職業病だろう。朝食を兼ねた昼食もブランチと云うが,こちらは brunch と綴る。見ての通り breakfast と lunch の合成語だ。厳密な初出は不明だが,どうやら20世紀初頭にはアメリカで俗語として流通していたらしい。昼食が朝食を兼ねることは経験的にもかなり頻繁に起こるのに,それ自体を表す語が1900年台まで存在しなかったことも不思議といえば不思議だ。おそらく,近代化の中で1日の食事を朝昼晩に3分割する様式が標準化したことに由来を持つ概念ではないか。それにしてもいささか安直過ぎる合成だと思う。さておき,昼食を兼ねる夕食という概念はついぞ目にも耳にもしたことがない。強いて合成するなら linner あたりになろうか。無理に何度か発音してみる。ひどい出来だ。音もひどければ,これといった用途も思い当たらない。だからいまだ存在しないのだろう。

今日の dinner はすき焼きだった。本当は昨日友人と囲む食卓で供するつもりで用意したのだが,妻の具合が悪くなり,僕の手際と要領では客人をすき焼きでもてなす自信がなかったところを急遽ピザで代替した。その分の牛ロースが翌日,つまり今日に持ち越されたというわけだ。すき焼きというのがじつに久しぶりだ。冬のかき氷よろしく,夏のすき焼きというのもなかなかオツな風情がある。たまごと和えてほおばると乳っぽい牛脂の香りが広がる。割下の甘みとたまごのとろみをまとって,喉越しも申し分ない。くたくたのエノキや味の染みたネギを中に巻いてもう一口。うまい。ビールを開ける。じつによくあう。小皿に漬物をあける。海苔も出す。豆腐も入れる。そんなふうにあれこれと箸を構えつつ食べすすめたら,あれよという間に250gをぺろりと平らげた。

それからは,うたた寝をしたり,そのせいでなかなか寝付けなかったりしながら,今こうして日記を書いている。