福島にいくのは初めてだった。福島といっても実際に用事があったのはどちらかというと郡山の方で,新幹線の駅から車でさらに40分ほど山あいを縫っていった先にある,一風変わった工場への訪問だった。朝から新幹線に乗り遅れたり,新幹線を乗り過ごしたり,さんざんな出だし。結局なんだかずっとパッとしない1日で,やけに疲れた。そういうぼんやりとした1日の中で,車窓から見た,里山にばら撒かれて張り切った様子のソーラーパネルと,その隣で沈黙する廃校になった小学校とのコントラストだけが,初夏の光を含んでやけに鮮やかだった。

郡山で降りるはずが福島駅まで乗り過ごした。この時すでに遅刻しており,さらに悪いことにはあらゆるデバイスの充電がギリギリだった。特に携帯の電池切れは避けたい。見知らぬ土地にいる上に,すでに人を何人も待たせている。エスカレーターを駆け降りてすがる思いで買った乾電池式の充電器はすぐに使えなくなり,あわてて買い直したリチウムイオン式のものは買った時点では未充電で使えなかった。何もかもうまくいかない。駅構内に充電ができそうな場所が見当たらなかった。何もかもうまくいかない。しかたなく郡山へ向かう新幹線で15分だけ充電した。焼け石に水だと思っていたが,存外に効果があったようで,携帯だけはなんとか仕事が終わるまで使える状態だった。

帰宅して妻の顔を見たらどっと疲れが押し寄せてきた。きっと移動の疲れだけじゃない。準備運動で終わってしまった1日と,そのように過ぎてしまった時間と,そのように過ごしてしまった自分と,そういうもの全部にすごく疲れていた。水を飲んで,妻にお土産を渡して,それからは,ただ,寝た。